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私の知り合いにひとり貴族がいるのですが、なかなか面と向かって「どんな暮らしをしてるの?」なんて聞けないもの。 いろいろな話をつなぎ合わせると、彼は労働をしたことがなく、一家所有の不動産を管理させて暮らしているようです。 仕事と言えば、貧しい国へ慰問旅行。年に数ヶ月はパリを離れているのだそうです。 貴族らしからぬラフな格好をしているし、たまーに会うくらいなのでプライベートなことは話さないし、貴族の暮らしは謎に包まれたまま。 労働するのは一家の恥と考えられているらしく、かといって一家の財産にかかる税金が大変なので、貴族の暮らしぶりも楽じゃない、とテレビでやっていたのを見たことがあります。 やっぱり浮世離れした生活なのでしょうか? 流しにはフルーツや本物(?)のフルーツの砂糖漬けの瓶が置かれ、生活ぶりが伺える演出をしています でもニッシム・ド・カモンド美術館に行くと、戦前の貴族の暮らしぶりがちょっと想像できるかもしれません。 この美術館で絶対見ておきたいのが、台所とお風呂場。 台所は地階の奥にあって、ちょっと古めかしい大げさなキッチンになっています。 ピカピカに磨かれた銅製のフライパンやお鍋が壁にかけられています。 もちろん食事は食事担当の召使いの仕事。大きなオーブンや流し、デザートを作るためのお部屋もあります。 召使いが食事をするお部屋なんかもありました。 公開はされていませんが、冷蔵庫部屋や貯蔵庫なんかもあります。 インテリア雑誌に出てきそうな感じ お風呂場は2階(日本式の3階)の家族のプライベートルームにあります。 白にブルーの地中海風のタイルが美しい、意外とモダンなバスルームなんですね。 エナメル加工されたお風呂に足湯、ビデもついてて、キャビネットもシンプルで機能的。 さすがに台所とお風呂場は機能優先で18世紀様式ではないですね。 奥に見える女性の肖像画を描いたのは、マリー・アントワネットが重用した女性肖像画家によるもの この邸宅は1階(日本式2階)が、大サロンや食堂などお客様を招待するときに使う部屋がある階になっています。 どのお部屋も階段広場(ギャラリー)を望むことができる開放感ある設計です。 玄関でお迎えしたお客様をそのまま階段(これもプチトリアノンにある階段にそっくり)で上に上がっていただいて、 素敵な絵画や家具やオブジェがたくさんあるサロンで談笑してたのでしょうね。 どの部屋も豪華ではあるけれど、お客さんと親密な距離を保てそうな適度な大きさの部屋ばかりです。 そして彼らの自慢の18世紀の新古典主義スタイルのソファや机、椅子、棚などが所狭しと置かれています。 新古典主義のスタイルは、脚が細くまっすぐだったり、装飾がどこかギリシャローマの建築を思わせるようなものだったりします。 幾何学模様の寄木細工の家具もこの時代によく作られました。 色もオフホワイトやパステルブルーなんかが多いですね。 写真には写ってませんが、薄いグリーンの壁に薄いピンクのカーテンの組み合わせがとってもかわいらしかったです 順路に沿っていくと最後にある薄いグリーンの大食堂に注目です。お客様とのディナーを楽しむお部屋。 お庭に向かっての開放感もさることながら、鏡もあって広々とした空間になっています。 そしてお料理を引き立たせるためか、装飾は他の部屋に比べてちょっと控えめ。 地階でつくられた食事は、食事用エレベーターで1階に運ばれ(食堂の横にこの「待機室」があります)、サービス係が最後の盛りつけなどをしてちょうどいいタイミングでテーブルに運ばれます。 19世紀の貴族の食事は、だいたい5つのサービスからなっていたそうです。 1)スープ、テリーヌ、シチュー 2)ソースのかかった肉料理、魚料理 3)大きな塩味のデザート、中くらいの甘いデザート、ロースト、サラダ 4)温野菜、パイ 5)チーズのデザート、チーズ、煮込んだ果物、クリーム、アイスクリーム、ジャム、果物 これがサービスの中身です。デザートが多いですよね? 全部食べる人はいないけれど、どんな食いしんぼうも、偏食の人も満足できるように、毎回50から100種類の料理が用意されました。 隣のお皿のギャラリーにある、18世紀のbuffonという鳥をモチーフにした高級食器や銀器を使いながら、好きなものを好きなだけ食べたのだそうです。 中央には塩やスパイス、オイル、ヴィネガーなどと、花や陶器などの装飾がされていたようです。 賑やかだったでしょうね。一度はそんなお食事会に呼ばれてみたい! 建物の真ん中に位置する図書室の窓からは、小さなフランス式庭園とその向こうにモンソー公園が見えて落ち着きます 邸宅の2階(日本式3階)は家族のプライベートルーム。サロンや寝室、書斎などがあります。 やはりどの部屋からもギャラリーが見えるようになっていて家族の交流がとりやすい構造になっています。 中央に図書室を設けて、お庭をみながら読書ができるようになってるのは素敵。 プライベートルームはどれも仰々しさがなくて、のんびりできそうです。 ちなみに、モイズ(父)とニッシム(息子)の部屋しかないのですが、これは奥さんと離婚し、娘が嫁いだあとの、モイズの晩年の家をそのまま美術館にしたからでしょう。 ニッシムが戦争で亡くなった後、この大きなお屋敷でひとり過ごさなければならなかった父モイズの晩年は、 きっと寂しいものだったでしょうね。 いかがでしたか? 貴族の暮らし、ちょっとは想像できたでしょうか? プライベートルームは木目を生かした家具が多くて、おちついた部屋が多かったです。 対しておもてなし部屋の方は、金色で縁取られ、花や植物模様の派手な家具やボワズリーが多く、とてもきらびやかでした。 プライベートのなかった王室とは違って、オンとオフをきっちり分けることができてたんだと思います。 ものすごいお金持ちなのは確かですが、生活は私たちとそんなにはかけ離れてなかったのかもしれません。 Musée Nissim de Camondo公式サイト (英語) 63 rue de Monceau 75008 メトロ 2番線 MonceauまたはVillier 閉館日 月曜日、火曜日 開館時間 10時から17時30分まで 入場料 6ユーロ(日本語のオーディオガイド込み)
by paris_musee
| 2009-06-29 00:00
| 邸宅ミュゼ
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