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あけましておめでとうございます。
今年もまだまだたくさんあるパリのミュゼ情報を発信して行きたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。 3階の天井の高い大アトリエ。向こうに見える螺旋階段をのぼって4階のアトリエに行きます さて、引き続きモロー美術館です。 実は10年ほど前に観光客として母と訪れたことがありました。 当時は美術館巡りに一生懸命で、どんな辺鄙なところでも早朝から出かけては暗くなるまで美術館のハシゴをしたものでした。 インターネットが今ほど普及してなかった時代、ガイドブックに載っていないような美術館もどうにか調べて行きました。 今回再び訪れてみて、こんな行きづらいところによく行ったものだなーとちょっと感心してしまいました。 この美術館、12番線のSt GeorgeかTriniteから歩いて行くのですが、 場所的にはプランタンなどのデパートや、最近オープンしたユニクロなどのあるオペラの北側でありながら、とっても閑静なカルティエ(地区)です。 現在は学校や会社のオフィスなども多いですが、もともとここは19世紀の新興ブルジョワが好んで住んだ住宅街です。 la Rochefoucaud通りの14番地の建物はまるごとモロー家の邸宅だったようで、彼もまたお金持ちのご子息だったのでしょう。 19世紀の中ごろ、26歳のときに両親がこの建物を購入します。 その前はもうちょっと北のモンマルトルの丘のふもと、ピガールというカルティエにアトリエを借りていました。 パリに住む人は、気に入ったカルティエからなかなか離れないと言いますが、 モローもまた今で言う9区(オペラ裏からモンマルトルの丘のふもと)あたりがお気に入りだったんでしょうね。 このミュゼでは入り口の重い扉を開くと小さなミュージアムショップ兼チケット売り場があり、すぐに階段をのぼって2階にいきます。 現在は2階が住居部分、3階と4階がアトリエになっていますが、3階と4階をアトリエに改造したのは彼の亡くなる3年前なのです。 当時は4階の一部のみがアトリエで、他は両親の部屋や彼の部屋でした。 それを死後に美術館にして作品をまとめてみんなに見せたいということで、急遽大改造をしたのです。 どうりで作品を展示しているアトリエがとっても広いのに、住居部分が狭いんだなーと思った訳です。 しかも公開されているお部屋には家具が所狭しと並んでいます。 大アトリエ作るときに取り壊した両親の部屋などに置いてあった家具が、2階のお部屋にギュウギュウに並べてあるからなんですって。 2階にのぼるとすぐに書斎があります。 2003年に公開されたということで、10年前に私が訪れたときは観ることができませんでした。 この部屋もまたモロー晩年の大改修のときに作られたそうです。 彼は友人、知人がやってくると、この部屋に迎え入れました。 ここに展示されているのは、彼が集めた貴重な本や、父が大切にしていた建築関係の蔵書、親子で収集したセラミックやブロンズ、石膏のオブジェなど。 紀元前にさかのぼるものもあるんですよ。 そして壁一面にはデッサンがたくさん掛けられています。 これはモローがルーヴル美術館やイタリアの各都市で模写したラファエッロ、ベラスケス、ヴァン・ダイクなどのデッサンや油彩、水彩などです。 配置もモローによるものだとか。 muséeの中のmuséeとも言えるお部屋なのです。 小さな食堂です。 19世紀中ごろに購入したとされるルイ16世様式(新古典主義様式)の椅子や、モローのデッサンや他の画家の版画も壁に飾ってあります。 ちょっと豪華な壷や食器などはお父さんのコレクションでしょうか。 小さな食堂ですが、高価な家具や食器を取り揃えているのをみると、モロー家が19世紀のお金持ち、新興ブルジョワジーだったことがわかります。 現在のこの配置は残った写真を見て再現したのだそうです。 スカイブルーのきれいな寝室ですが、ちょっとものが多すぎる印象があります。 それはさっき書いた通り、モローの母の居間にあった家具など、家族の思い出の品をアトリエ大改造のあとこちらに移動したからなのです。 母が寝室で使っていた机とモロー自身が使っていた家具が一緒に置かれています。 家族の肖像画や写真、デッサンが飾られていて、モローにとってここは家族の思い出の場所だったのかもしれません。 ちなみに女性の胸像がついている小さなベッド、花瓶の象眼が美しい棚などの家具は19世紀に流行ったナポレオン様式のものです。 ものがたくさんあってゴチャゴチャしがちですが、色や様式を統一したりすると意外としっくりきますね。 寝室の奥にboudoirという小さなお部屋があります。 こちらも寝室と同じスカイブルーの壁紙に、引き出し、椅子、机、棚、や額縁や壁掛け時計、燭台、絵皿などが所狭しと飾られています。 モローは生涯独身でした。 けれど30年以上も仲良くしていたアレクサンドリンという「最良の唯一の友」がいました。 その彼女の思い出の品と両親の寝室にあった品を展示しているのがこちらのお部屋なのです。 モローの小さな作品もいくつか壁にかけられています。 いかがでしたか? アトリエの大改造がなければもっと広々とした住居部分がみれたかもしれませんが、 モローには跡継ぎがいませんでしたので家を守ることよりも、画家として作品を守ることを決めたのでした。 この大改造とモローの作品整理のおかげで、彼の未完の作品やノートの切れ端に描いたようなデッサンなど、 大きな美術館で観ることができないような彼の軌跡も目にすることができるのです。 彼の使った家具がそのままになっているお部屋を巡ると、そのアーティストの考えたこと、見たこと、感じたことがわかるような気がしてくるのです。 このようなアーティストが暮らした家をミュゼにしているところがパリにはいくつかありますので、これから少しずつご紹介して行きますね。 それではまた来週。 今回の書斎と食堂の写真はMuséeの公式サイトからお借りしました。 ギュスターヴ・モロー美術館 Musée National Gustave Moreau 住所:14, rue de la Rochefoucaud 電話:0148 74 38 50 メトロ:12番線 Trinite または st-George 開館時間:10:00-12:45 昼休みをはさんで 14:00-17:15 休館日:火曜日 入場料:5euros (割引は3euros、18才以下と第一日曜日は無料) 美術館公式サイト
by paris_musee
| 2010-01-04 00:00
| 邸宅ミュゼ
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