人気ブログランキング | 話題のタグを見る

パリにあるとっておきミュゼをご案内します
by paris_musee
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
ナンシー派のメッカを訪れる Nancy Musée de l'École de Nancy
ナンシー派のメッカを訪れる Nancy Musée de l\'École de Nancy _f0197072_22451578.jpg

駅からスタニスラス広場へ向かう道にあるアール・ヌーヴォーな建物
どの地方都市もそうなのですが、TGVの駅は中心地から離れたところにあり、旧市街と呼ばれる大聖堂を中心とした歴史的建造物が多い場所はギュっと凝縮していて、1日もあればだいたいの見所は見れてしまうんです。
ナンシーのもうひとつの見所は、アール・ヌーヴォー。
町のあちこちにアール・ヌーヴォーな建築が見られますよ。
でも何といっても、「ナンシー”派”美術館」(広場にあるミュゼは「ナンシー美術館」です)を訪れていただきたいのです。
ロココなスタニスラス広場からまた駅に戻り、駅の裏の道を20分くらい歩かなければなりませんが、ここを見なければ本当にもったいない美術館です。
ナンシー派のメッカを訪れる Nancy Musée de l\'École de Nancy _f0197072_2245307.jpg

町中にあって普通にナンシーの人たちが暮らすアパルトマンの玄関。40番地の数字もアール・ヌーヴォーしてます
19世紀末にアール・ヌーヴォーが誕生しますが、ナンシー派というのは、その中でもとりわけナンシー出身のグループを指します。
もともとロレーヌ公国の首都ナンシーは昔からガラス工芸に秀でていました。
19世紀末にナンシー出身のガラス職人エミール・ガレによって作られた、曇らせたり象眼を施したりしたガラス工芸品がパリ万国博覧会に出品、受賞すると、この神秘的なテクニックとデザインのナンシー派の工芸品が有名になりました。
のちにこのエミール・ガレを中心として「Ecole de Nancy」(日本語で「ナンシー派」)というグループが作られたんです。
折しもイギリスではラファエル前派など世紀末芸術が流行りつつあったところへ、彼らの作り出す神秘的で妖艶な作品が時代精神とマッチしたのですね。
ナンシー派のメッカを訪れる Nancy Musée de l\'École de Nancy _f0197072_2246699.jpg

ナンシー派美術館の建物とお庭。内部の写真撮影はできませんでしたが、これでもか!!!というくらいのアール・ヌーヴォー三昧でした
このナンシー派美術館には、ガレやドーム兄弟、ルイ・マジョレルなどナンシー派のアーティストによる家具、工芸品がたくさん展示してあります。
邸宅を改造しているので、あたかも誰かの家に訪れているかのような感じがしますし、展示品も生活空間にあうようになっているので面白いですよ。
ベッドやベッドランプ、タンス、クローゼット、ダイニングテーブルetc...すべてにおいてアール・ヌーヴォー様式で統一されていて圧巻です。
お庭はさすがに一般的なガーデニングで整えられていてナンシー派っぽくないですが、広くてベンチでのんびりするのに最適ですよ。
(館内は写真撮影が禁止されていますので注意してくださいね)

アール・ヌーヴォーは広義に使われるフランスの世紀末趣味な美術と工芸品の運動ですが、ナンシー派はアール・ヌーヴォーの前身とも言ってよく、工芸品がメインの運動になります。
それまではお金持ちから注文を受けた高級家具職人のアトリエが、技巧をこらして作った家具や工芸品でしたが、ナンシー派はよりアート色の強い、デザイン性の高い作品なのです。
大げさに言ってしまえば、日常使いの工芸品をアートに高めた、またはアートに高めようと意識を持った作家によって作られた作品と言ってもいいかもしれません。
ナンシー派のメッカを訪れる Nancy Musée de l\'École de Nancy _f0197072_22454546.jpg

駅のそばにあるFloというブラッスリー。店内装飾がアール・ヌーヴォーになっててとても雰囲気がいいですよ。お食事も高くなくておいしかったです
ナンシー派の中心人物エミール・ガレは日本でも大人気で、日本にかなりのコレクションがあるようです。
ご覧になった方も多いと思いますが、ガレの作品には植物の有機的な曲線が多用されたり、植物や昆虫などの神秘的な組み合わせなどが特徴です。リアルな自然表現でなく、デザインされた自然表現です。
実は当時ナンシーに留学中の現在の農林水産省の官僚と交流があったらしく、もともと植物学が大好きだったガレは、彼から日本の自然観などを学んだのかもしれません。
時代的には日本では明治維新が起きた前後で、大量の浮世絵が欧米に輸入されヨーロッパ人の心を奪い、パリ万国博覧会では実際に着物を着たちょんまげ姿の幕府の要員や芸者がやって来たので、ジャポニズム(日本趣味)がとても流行っていました。
そういった環境の中でガレが日本の浮世絵や屏風絵などに見られるようなデザイン性の高い自然表現に興味を持ったのも不思議ではありません。
それに、ロココの花開いた町で生まれ育った彼は、自然とロココの装飾に多用される植物紋様を作品に取り入れる素地ができていたのかもしれませんね。

ナンシーだけでなく、ヨーロッパ全土で同時多発的に世紀末趣味、日本趣味などが複雑に絡み合い世紀末芸術が生まれて行きます。
アール・ヌーヴォーもナンシー派とパリ派(という名前は特にありませんが)などさまざまなグループがまとめられた運動と見ていいかと思います。
次回はナンシー派以外のアール・ヌーヴォーの作品について見て行きたいと思います。

**来週は都合により更新をお休みさせていただきます**

ナンシー派美術館 Musée de l'Ecole de Nancy
住所:38 rue du Sergent Blandan 54000 Nancy
電話:03 83 40 14 86
開館時間:10:00-18:00
休館日:毎週月曜、火曜、祝日
入館料:6ユーロ(18歳まで4ユーロ)、毎月第一日曜日は無料

こちらはナンシー派のホームページ内のナンシー派美術館の紹介ページ
by paris_musee | 2010-01-18 00:00 | その他
<< アートな映画 Achille ... ロココとアール・ヌーボーな町ナ... >>