パリにあるとっておきミュゼをご案内します
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世紀末芸術って? ギュスターヴ・モロー美術館 Musée National Gustave Moreau

フランスは地震がないせいか(地方によっては地震はあるそうです)、古い建物が今でも使われていたりします。
日本では「**の生家跡」という標識はよくありますが、フランスは生家だったり住んでた家だったりがそのまま残っていることが多いのです。
今回はアーティストが過ごしたおうちミュゼの中から、ギュスターヴ・モロー美術館をご紹介します。

ギュスターヴ・モローってご存知ですか?
活躍したのは19世紀後半。
ルーヴル美術館とオルセー美術館の両方に収蔵品がありますから、先週ご紹介したカミーユ・コローと年代は同じくらいでしょうか。

美術史としては「象徴主義」の先駆者と見なされています。
これはまだお話ししていないと思うので今回はまず「象徴主義」についてご説明したいと思います。
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イギリス人作家のオスカー・ワイルドが19世紀末に発表した『サロメ』という小説の挿絵。オーブリー・ビアズリーという画家です。
18世紀後期、19世紀初期フランスには「新古典主義」「ロマン主義」という大きな流れがありましたが、アカデミーを中心としたものでした。
その保守的なアカデミーに反発するアーティストが目指した方向として、ひとつは日本では大人気の「印象主義」(モネやゴッホが有名ですね)、もうひとつは「象徴主義」というスタイルがうまれます。
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現代のチェコ生まれ、フランスの世紀末に美術工芸のスタイル、アールヌーボーの作家として活躍したアルフォンス・ミュシャ。
ちょうどお隣のイギリスで「ラファエル前派」というスタイルがいち早く確立されていました。
これは、それまですばらしいとされてきた作品がイタリアルネサンスの巨匠であるラファエッロ的なものだったのですが、それ以前の中世の宗教的絵画や文学なんかをお手本にしよう!という運動です。
ラファエッロの特徴ががキッチリカチカチの「理性」「現実」だとすると、その反対の儚い「感性」「精神」「夢」なんかがもてはやされるのです。

21世紀になる前の1999年、まことしやかにノストラダムスの大予言が的中して地球が滅びるとか、コンピューターが制御不能になるとか、不安になるような噂がたちましたよね。
20世紀になる前の世紀末もまた、ロンドンでは切り裂きジャック事件が世の中を震撼させたりと社会不安がひろがり、ちょっとオドロオドロしいような世界観、儚い夢の世界、退廃的で神秘的なものなんかが文学でも美術でも市民権を得るのです。
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この作品はご覧になった方が多いと思います。ウィーン世紀末芸術を代表するがかクリムトの『接吻』
こういった世紀末の不安を背景にして、ヨーロッパ中で「世紀末芸術」と総称できる(各国各グループでで呼び名は異なりますが)運動が起こったんですね。
大雑把に言ってしまえば、エミール・ガレもミュシャもクリムトもギュスターヴ・モローもウィリアム・モリスもロートレックもムンクもアントニオ・ガウディも「世紀末芸術」のアーティストに分類できます。

そんな「世紀末芸術」が描いたものは現実のリアルな世界というよりは、現実にはありえないようなちょっと暗い世界です。
「死」「夢」「神話(とりわけ悲劇的なシーン)」「幻想的な物語」「退廃」「絶望」「モンスター」「エロス」「アンニュイ」なんかがよく画面に表れます。
綺麗な原色よりはちょっとくすんだ暗い色が画面を支配します。
個人的には、見ていて元気がでるような明るい作品ではなく、ちょっと「どうしたのかな?」なんて心配になるような作品だと思います。

なんとなくわかっていただけたでしょうか?
そんな世紀末芸術、フランスでは特に「象徴主義」と言われる運動の先駆者と見なされているのがギュスターヴ・モローという画家です。
来週はモローの人生をクローズアップしてご紹介して行きたいと思います。

今回の画像はすべてwikipediaよりお借りしました。


ギュスターヴ・モロー美術館 Musée National Gustave Moreau
住所:14, rue de la Rochefoucaud
電話:0148 74 38 50
メトロ:12番線 Trinite または st-George
開館時間:10:00-12:45 昼休みをはさんで 14:00-17:15
休館日:火曜日
入場料:5euros (割引は3euros、18才以下と第一日曜日は無料)
美術館公式サイト
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# by paris_musee | 2009-12-07 00:00 | 邸宅ミュゼ
さすがは本場、充実のフランス絵画 パート10 ルーヴル美術館 リシュリュウ翼+シュリー翼2e(3階)
長らく放置してしまってすみませんでした。
急に忙しくなってしまい、「ミュゼのある暮らし」ができないでおりました。

さて、ルーヴル美術館、フランス絵画シリーズの最終回です。
前もお話ししたかと思いますが、ルーヴル美術館の担当は1848年まで。
1848年から1915年までは、セーヌ川を挟んだお向かいのオルセー美術館が担当することになっています。
実はその1848年をまたいで活躍している画家はどちらの美術館でもお目にかかることができたりします。

今回はそんなパリの二大美術館に展示されているジャン・バティスト・カミーユ・コローについてお話ししたいと思います。
印象派のピサロやルノワールは彼の影響を受けたと言われている画家です。

彼の作品、なんてことない風景画(失礼)に見えるんですが、私は大好きです。
ルーヴル美術館のフランス絵画展示室をえんえんと歩いて来て、歴代の偉大な画家の有名な作品を観てクタクタになった脳みそを癒してくれるような、そんな優しい作品なんです。

彼は裕福な家庭に生まれ、一度は家業を継ぎますが、どうしても画家になる夢をあきらめられず両親を説得して絵描きの道を歩みます。
新古典主義の歴史風景画家の先生に師事しつつ、フランス各地を回って風景の写生をしたりして画家としての力をメキメキとつけて行きます。
そして画家にとってあこがれの国でもあるイタリアへ3年間も留学する機会にも恵まれました。
ローマ、ナポリ、ヴェネツィア、美しい町を巡りながらたくさんの風景画を描きます。
旅で訪れたのどかな田園風景を閉じ込めた『〜の思い出』というタイトルの作品がいっぱいあります。
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モルトフォンテーヌというのは、パリ郊外のシャンティイ城のそばにある美しい村です。

まずはこちら。私が好きな『モルトフォンテーヌの思い出』
去年、上野や神戸でやったルーヴル美術館展にも展示されていたようですので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
当時もサロンに出品して大好評を博し、ナポレオン3世が買い上げたという作品。
どうですか?
これぞ「癒し系絵画」と言ってもいいくらい(表現が軽々しくてごめんなさい)、夢のような美しい風景が自分の目の前に広がる、そんなホっとする作品だと私は思います。
湖のほとりを描いたこの画面の3分の2を占める右の大きな木。
葉のつき方や枝っぷりも立派なのですが、背景の空気に溶けて行っちゃいそうな優しく儚い葉っぱの描き方がとてもポエティックです。
自然の雄大さとか威圧感が、これだけ大きく画面に収まっているのにみじんも感じない。
ひっそりとたたずみ、時折葉を揺らしてさわやかな風を知らせる優しい自然なのです。
よ〜く見るとちょっと雑な筆致なんですが、そのかすれ具合がうまい具合に淡い光や霧を表現していて、水墨画みたいな幽玄な雰囲気を出しているんですよね。
私たちは(多分)モルトフォンテーヌの景色を知りませんが、「思い出」というタイトルがつくことによって、個々の中にあるヨーロッパの田園風景のイメージが、あたかも行ったことがあるかのような個人体験として蘇ってくるような気がするんです。

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ああ、都会の喧噪を離れてこんなところでのんびりしたい!とプチ逃避行するのにうってつけの絵画だと思います。
次は『ティヴォリのヴィラ・デステの庭園』
ローマの近くにあるティボリに位置するヴィラ・デステ。
文化を愛したイタリア貴族の家系であるエステ家が所有する広大な庭園で、現在ユネスコに登録されているそうです。
たくさんの水の芸術があることで有名。
コローもきっとここの美しい噴水をたくさん見たと思うのですが、この作品はヴィラ・デステから町、遠くの山を臨む景色が描かれています。
近景から遠景まで暖かい光に包まれて浮かび上がるのどかな景色。
中央にはラフな格好をした少年がぽつんとひとり腰掛けています。
人物も木々も家々も遠くの山も柔らかい光を浴びて気持ち良さそうです。

この作品にも特徴的ですが、私が好きなのはコローが使うクリーム色。
絵の具の質感も感じるようなペタっとしたクリーム色が、なぜか温かく柔らかい風景画の中でリアリティを感じさせるよな気がするんです。
コローの作品は決して写実的にホンモノと同じように描かれてる訳ではないし、本来なら絵の具のペタっと感は「これはあくまで絵画です!」と現実に引き戻されるはずなのに、彼のクリーム色のおかげでこの風景画を風景として感じられるように思うんです。
個人的な感想かもしれないんですが、もしコローを間近で観る機会があったら是非クリーム色に注目してみてほしいです!

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風景画のコローですが、もちろん他のジャンルも描いています。
有名なのは『真珠の女』
これもまたクリーム色が使われていますね!
この女の人、ルーヴルにいる有名人にどことなく似ていると思いませんか?
そう、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』です。
腕を組んでやや斜めからこちらを向くポーズはそのままモナリザの構図ですよね。
よく言われる『モナリザ』の神秘的な微笑みではないですが、こちらの女性もまたちょっと寂しそうな表情の奥に、柔らかさや気品が感じられます。
コローがあえて『モナリザ』の別解釈として描いたのか、それともただ単に構図を拝借しただけなのかはわかりませんが、彼が死ぬまで大事に持っていたというエピソードまでレオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』に重なります。
ちなみにおでこに光る一粒の点が真珠に見えることから『真珠の女』という名前がついていますが、本当は木の冠です。

他にも、ルーヴル美術館のフランス絵画の最後のお部屋にはたっくさんコローの作品があります。
アントレから始まり、メインディッシュ、チーズ、デザートと続いて、お腹がいっぱいになった後のコーヒータイムのように、ここで怒濤のフランス絵画を締めくくるのにちょうどいい作品だと思います。
フランス絵画は胃にもたれますので、コーヒータイムではあまり脳みそを働かせずにのんびりと鑑賞するのがオススメです。

長かったルーヴル美術館フランス絵画も今日でおしまいです。
おつきあいいただきありがとうございました。
これからも『ミュゼのある暮らし』を心がけて、またいろいろな美術館をご紹介して行きたいと思います。

*今回の画像はルーヴル美術館ホームページ、Wikipediaよりお借りしました。


住所   rue de Rivoli 75001(正式な住所はMusée du Louvre。メトロを出たらすぐわかると思います)
メトロ  1番線、7番線 Palais Royal-Musée du Louvre
開館時間 水曜日から月曜日 9時から18時(水曜日と金曜日は22時まで)
チケット 常設展とドラクロワ美術館 9ユーロ (水曜日と金曜日の18時から6ユーロ)
ナポレオンホールの企画展のみ 9.5ユーロ
常設展と企画展 13ユーロ (水曜日と金曜日の18時から11ユーロ)
毎月第1日曜日は入場無料
日本語公式サイト


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# by paris_musee | 2009-11-30 00:00 | 有名ミュゼ
さすがは本場、充実のフランス絵画 パート9 ルーヴル美術館 ドゥノン翼1er(2階)

さあ、ルーヴル美術館のフランス絵画のお話も終わりに近づいて参りました。
今日はロマン主義についてのお話です。
今回もwikipedia franceから画像をお借りしています。

時代は18世紀の終わりから19世紀にかけて。
ロマン主義というのは文学におけるスタイルとして使われることが多いのですが、絵画におけるロマン主義というのもあります。
**主義というのは、たいてい前スタイルへの反抗がもとになっていますので、新古典主義との比較で特徴を観て行きたいと思います。

新古典主義は理知的で、歴史や古代ギリシャローマをテーマにしていて、厳格な水平垂直の構図や画面を安定させるための三角形を多用しました。キッチリカッチリがモットー。とても男性的です。
一方のロマン主義というのはその反対と考えていただいて結構です。
でも新古典主義の前のロココにはならない。
もうフランス革命が行われていて、時代は王様のものではなく市民(ブルジョワジー)のものだったからです。
おまけにナポレオン帝国が東へ領土を広げまくっていて、キリスト教世界と異なるオリエンタルな世界の情報が入って来る。
新古典主義のキッチリカッチリが窮屈すぎて、そこから解放されたくて仕方がない、そこに東方趣味が加わります。
個人的にも理性的なものから逃れたくて、夢や幻想、個人の気持ち、内面世界が注目される。

というわけで、題材はオリエンタルなもの、現実世界の恐怖や不安を感じさせるような事件、夢のような幻想的な世界を描きます。
ドラマチックに描きたいので、対角線構図を用いて画面に動きがあるように見せたり、ハっとするような一瞬を切り取ったりします。
ロマン主義の画家として有名なフランスの画家はウジェーヌ・ドラクロワとテオドール・ジェリコー。
さっそく代表作品を観て行きましょう。

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この中央の女性はフランスを象徴する「マリアンヌ」の元祖モデルになっています。フランスの切手に使われる肖像画です。今っぽくするためにブリジッド・バルドーなんかがモデルになった時期もありました
『民衆を率いる自由の女神』ウジェーヌ・ドラクロワ
この作品、名前は知らなくても観たことがある方はすごく多いと思います。
フランス革命と思い込んでる方もいるかもしれませんが、1830年の7月革命が題材です。
フランスの国旗トリコロールは、「自由」「博愛」「平等」の意味を持っていますが、これらを勝ち取るために立ち上がった半裸の女性と、彼女に率いられ武器を片手に立ち上がる民衆の興奮した空気が伝わってくるような作品です。
画面下に横たわり踏みつけられた死体も、革命の切迫感、凄惨さを表していますよね。
国旗や衣服、背景の煙なんかも動きのあるダイナミックな作品の小道具となっています。
この作品は当時の事件をドラマチックに描いたロマン主義の象徴的な作品です。

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画面のどこを見ても悲壮な物語が繰り広げられているオリエンタルな一枚です
『サルダナパールの死』ウジェーヌ・ドラクロワ
こちらはどうでしょう?
中央のベットに横たわるのが古代アッシリアの王様サルダナパール。
その周りで家臣たちが次々と殺されていくのを落ち着いた様子でながめています。
実は、圧政に耐えかねて反旗を翻した反乱軍の前で、快楽主義者だったサルダナパールは自分の臣下を目の前で殺させるというシーンなのです。
赤いベットが斜めに画面に配置され、体をさまざまな方向によじらせながら殺されて行く臣下たち。
王のまわりには大切にして来た宝が散乱しています。
色彩の氾濫、四方八方に目移りするようなダイナミックな構図、この絶望的で凄惨な場面に立ち会いながら冷ややかな目で事の次第を見守る王の表情が尚いっそうこの修羅場を強調しているようです。
オリエンタルな題材もまたロマン主義ド真ん中ですよね。
ちょっと刺激が強すぎて、サロンではスキャンダルになり不評だったといいます。

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現実にあった壮絶な事件をもとに描いた作品。色味が少なくモノトーン調なのがよりいっそう悲劇をひきたたせていますね
『メデュース号の筏』テオドール・ジェリコー
彼が生きていた時代に実際にあったお話が題材になっています。
王立海軍のメデューサ号という船が難破してしまい、救命ボートも満足になかったため乗客は即席で作られた筏に乗らざるを得ませんでした。
13日の漂流の末、150人いた乗客のうち救出されたのはたったの10人だったといいます。
しかもこの生存競争には暴力や人食いなども行われ、凄惨を極めたためフランス政府は事件を伏せていました。
生存者の証言により事件が明るみに出て、この事件に人々は大きなショックをうけたのです。

この事件に着想を得たジェリコーは、生存者に話を聞いたり死体安置所などに通いつめてデッザンを繰り返し、現実の事件をこの目で見たかのようなリアリティーを持って作品を仕上げました。
画面の右、水平線の先に本当に小さな船の存在が確認できます。
この船が彼らに気づくことなく遠ざかって行くところを、生存者たちが懸命に絶望と最後の希望の入り交じったサインを送るという緊張した一瞬を描いているのです。
右上に向かう人体のうねるような動きや、死、絶望、恐怖、諦め、嘆願、歓喜の青白い人体をさらに劇的に描く明暗表現、見るものをドキドキさせるような緊張感がここにはあります。
もちろんサロンでは注目を集めます。
残酷な場面にロマン主義の作品として絶賛する人もいれば、リアルな死体表現に嫌悪感を抱く人もいました。
みなさんはどんな気持ちでこの作品をご覧になるでしょうか?

というわけで、次回はルーヴルのフランス絵画シリーズの最終回としてコローの風景画についてご紹介したいと思います。



住所   rue de Rivoli 75001(正式な住所はMusée du Louvre。メトロを出たらすぐわかると思います)
メトロ  1番線、7番線 Palais Royal-Musée du Louvre
開館時間 水曜日から月曜日 9時から18時(水曜日と金曜日は22時まで)
チケット 常設展とドラクロワ美術館 9ユーロ (水曜日と金曜日の18時から6ユーロ)
ナポレオンホールの企画展のみ 9.5ユーロ
常設展と企画展 13ユーロ (水曜日と金曜日の18時から11ユーロ)
毎月第1日曜日は入場無料
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# by paris_musee | 2009-10-19 00:00 | 有名ミュゼ
さすがは本場、充実のフランス絵画 パート8 ルーヴル美術館ドゥノン翼の1er étage(日本式2階)

時間がなくて写真を撮りに行くことがいまだにできないのですが、お待たせしてばかりなのでルーヴル美術館の続きを書くことにします。
写真はwikipedia franceよりお借りしています。
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このデッサンが、ジャック・ルイ・ダヴィッドによって描かれた処刑場に向かう最後のマリー・アントワネットの肖像画です。
前回のルーヴル美術館の回では、ルイ16世とマリー・アントワネットの治世が新古典主義だったとお伝えしました。
が、ご存知の通り彼らはギロチンにかけられて処刑されてしまいます。
マリー・アントワネットが処刑される日、おんぼろの荷台に乗せられてコンコルド広場まで連行される様子をカフェのテラスでスケッチした人物がいるんです。
それが今日お話しする新古典主義の代表画家、ジャック・ルイ・ダヴィッド。

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新古典主義絵画の特徴をまんべんなくちりばめた彼の代表作です
ルイ16世が彼に初めて注文して作らせた作品が『ホラティウス兄弟の誓い』。
これはかなり好評で、ちょっと画家デビューの遅かった彼を一気に有名にした作品です。
モチーフとなったお話はローマ時代のもので、決着のつかない国同士の争いにピリオドをつけるため、ホラティウス家の3人の兄弟が父に「国をかけて果敢に戦います!」と宣言する場面です。
不穏な空気が漂うフランスに、愛国心と忠誠心を誓うというモチーフで作品を描かせたのですね。

この作品、とっても新古典主義のにおいがプンプンします。
まずローマ時代の歴史的な話がモチーフになっていて、マジメな話です。
室内装飾はスッキリしていて、登場人物の衣服も原色が多い。
カッチリと画面を安定させる技が隠れています。数字の3、三角形、直線。
ローマ時代のアーチ型建築が3つに分かれているので、私たちは自然と真ん中にいるお父さんに目がいきます。
足の形がつくる三角形も、剣と誓いの手と足を結んだ三角形もあります。
でもあんまりカチカチすると不自然なので、右側に3人の悲しみにくれる女性が柔らかい曲線を描いてメリハリをつけています。

新古典主義の作品は、ギリシャローマのマジメな話や当時のシンプルな衣装、建築装飾、そして水平や垂直線、三角形、3という数字をちりばめているのが特徴です。
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これとほぼ同じものがヴェルサイユ宮殿にもあります
ダヴィッドは血なまぐさいフランス革命に参加したんですが、ブルボン王朝が倒れたあとに君臨したナポレオンに重用され、首席画家となります。
このお部屋であっと驚く大きさの作品が『皇帝ナポレオン1世と皇后ジョセフィーヌの戴冠式』6m x 9mちょっとあるそうです。
1804年にパリのノートル・ダム寺院で実際に行われたセレモニーを描いた大作です。
登場人物も本物に似せて描いたため、ナポレオンは出席者を言い当てて楽しんだそうですよ。
中央で王妃に冠をかぶせているのがナポレオン。ひざまづいているのがジョセフィーヌ王妃。
中央上部で座っているのがナポレオンの母親、画面左の男性はナポレオンの兄弟、女性たちは彼の姉妹、右側は大臣などがいます。
ナポレオンの後に座っているのが教皇、そしてダヴィッドと奥さんも自身もちゃっかりお母さんの座っている左後ろあたりに描き込まれています。
ちなみにナポレオンのお母さんはこの式には参加してなかったのですが、やはり母からの祝福があった方が格好がいい、ということで特別出演しています。

さて、こちらもやっぱり新古典主義の作品なので、特徴を見て行きましょうか。
柱が3つあり、ちょうどその真ん中にナポレオンがいますね。
人々や室内装飾もちゃんと垂直方向の直線を形作っています、ひな壇や階段は水平線ですよね。
ひざまづいたジョセフィーヌの体が三角形を作っています。
衣装もエンパイヤ様式といって、ちょっとギリシャ風(当時流行っていたようです)になっています。
色も赤や紺、金といったハッキリした色です。
これだけ人物が多くてゴチャゴチャしそうな空間ですが、とっても荘厳な張りつめた空気が感じられる威厳のある作品になっています。

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レカミエ夫人が着ているギリシャ風の洋服をアンピール様式って言ったりします。ナポレオン帝国(=エンペラー)の様式ということですね
もうひとつ、私が好きなのがレカミエ夫人という実在の人物を描いた作品。
彼女は銀行家のご夫人で、当時の芸術家や有識者を集めたサロンを開いていた有名なマダムです。
この作品、ギリシャ風の衣装をつけた夫人が、長椅子にくつろいで座っているというだけのシンプルなもの。
でもランプの垂直線や長椅子の水平線、ちょっとその緊張を解くように垂れる衣服のひだが絶妙です。
人物画にしては大きなキャンバスは、本当なら歴史画を描くために用意されたサイズなのだそうです。
きっと新古典主義の大家であるダヴィッドは、ここにレカミエ夫人を歴史の1ページとして、理想的な女性美として描いた、と考えるのは行き過ぎでしょうか。
実はレカミエ夫人が気に入らなかったのか、この作品は未完成のままなのだそうです。
ちなみにルーヴル美術館の美術工芸コーナーには、このレカミエ夫人が実際に使っていたベッドや家具が展示されているんですよ。
彼女のものではありませんが、この作品で描かれているのと同じ長椅子もすぐとなりに展示されています。

来週はこのお隣の部屋、ロマン主義の大作をご紹介して行きたいと思います。


住所   rue de Rivoli 75001(正式な住所はMusée du Louvre。メトロを出たらすぐわかると思います)
メトロ  1番線、7番線 Palais Royal-Musée du Louvre
開館時間 水曜日から月曜日 9時から18時(水曜日と金曜日は22時まで)
チケット 常設展とドラクロワ美術館 9ユーロ (水曜日と金曜日の18時から6ユーロ)
ナポレオンホールの企画展のみ 9.5ユーロ
常設展と企画展 13ユーロ (水曜日と金曜日の18時から11ユーロ)
毎月第1日曜日は入場無料
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# by paris_musee | 2009-10-12 00:00 | 有名ミュゼ
ロンドンミュージアム part 2 ヴィクトリア&アルバート博物館 V&A museum

今回はロンドンのびっくりデザインミュゼのご紹介です。
パリの装飾美術館の作品群もすごいのですが、もっと度肝を抜かれるのがV&A museumです。
こちらの博物館は3回目の渡英にして初めての訪問でした。
こんなにすごいとわかっていたらもっと時間をたっぷりとったのに...というくらい大きな博物館です。

今回は自由時間に限りのある滞在でしたので、ほんとうに駆け足で回りました。
私が観た中で面白かったものをご紹介したいと思います。

この博物館の収蔵作品は「芸術とデザイン」に関するありとあらゆるもの。
もらってきたパンフレットによると、
level0はヨーロッパの1600-1800の作品と中世ルネサンスの作品の一部。
level1はアジア(中国、中東アジア、日本、韓国、南アジア、東南アジア)の芸術品が展示されています。
他にはヨーロッパの中世ルネサンス、北方ルネサンス、ルネサンスの巨匠ラファエルロ、ファッション、企画展があるようです。
level2は1500-1760年のイギリスの作品。
level3は20世紀のものと金・銀・モザイク、宝飾品、鉄製品、金属製品、絵画、細密肖像画、版画・ドローイング、ステンドグラス、銀製品、タピスリー、テキスタイル、演劇などのジャンルの工芸作品が展示されています。
level4は建築物と1760-1900年のイギリスの作品。
level6はセラミックの作品が展示されているとのことです。
3000年におよぶ世界遺産、そして世界一のデザインに関する収蔵品を誇るミュージアムです。
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中央のライトが現代作家の作品。ぼんやりと照らされているのが17世紀の高級家具です
私たちはメトロからのびる地下通路から入って来たので0階のヨーロッパ1600-1800年代の工芸品から観ました。
たまたまロンドンのデザイン・ウィークと重なっていたため、常設展示に現代の作家によるデザイン作品(照明でした)が展示されていました。
ルーヴル美術館やヴェルサイユ宮殿などでもたまにやっていますが、権威ある美術館に現代作家の作品が融合する展示はとても面白い!
ただ、今回は「照明」の作品だったため、会場内はそのライティングしかなく、暗くて古い作品の細部がよく観れなくて残念でした。
もっと昔の家具に施された壮麗な寄木細工(マルケトリー)などが観たかったんですけどね。

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さすが紅茶の国。茶器やアフタヌーンティの展示もありました
そのままlevel2にあがりヨーロッパの中世後期からロココ時代くらいまでの家具などを見学。
パリの装飾美術館やカルナヴァレ美術館などでおなじみの家具たちでしたが、家具だけでなく衣服や小さな遊具なども一緒に展示してあり、その時代の生活がわかるような展示でした。

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こちらが布地が収納された古めかしい木棚。ひとつひとつ引き出してじっくりみることができます
level3はほとんど部屋ごとに「金・銀製品」「宝飾品」「テキスタイル」などと分かれていて、どれもが充実した内容。
中でもテキスタイルのお部屋は大きな木製の棚に布がたくさん収納されていて、ひとつひとつ引っ張りだしながら見学できるのがすごいです。どれくらいの数があるのでしょうか?

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ある演目で使われた衣装。トーストや目玉焼き、ソーセージにケチャップ!?どんな劇だったのでしょうか、観てみたい!
個人的に面白かったのが演劇関係のお部屋。
さまざまな衣装や小道具が展示されていて、演出家などのインタビュー映像や俳優さんたちの写真も飾られていて、ヴァラエティに富んでいました。
衣装を試着できるコーナーもありましたよ。
演劇ファンだったらもっともっと楽しめたに違いありません。
それから、装飾美術館の宝飾品コーナーも大好きですが、こちらの宝飾品コーナーはもっと充実していました。
あいにくここは写真禁止だったため、ご想像いただくしかありませんが、懐中時計の作り方などを説明したヴィデオが流されていたり、壁に展示してある作品だけでなく引き出しの中にもたくさん作品があって、とにかく面白かった!

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こちらは椅子を実際に組み立ててみるコーナー。意外と難しくて断念しました...
ここにあるような工芸作品(生活用品)って、時代が違えば「どのように使っていたんだろう?」とか「どうやって作ったんだろう?」という疑問がわいてくるのですが、この博物館はそれに見事に答えてくれているんです。
実際に触れたり、組み立てたり、ヴィデオや音声、パネルで作り方を解説したりする仕掛けがたくさんありました。
こういう体験型ミュージアムだと、ただ観るだけだった作品も理解が深まって記憶に残りますよね。
お子さんがいらっしゃる方には親子で一緒に勉強できて、退屈しがちなミュージアム巡りが楽しくなりそうです。
パリのミュゼはあまりこういうことをやっていませんので、すごく新鮮でした。

最後は閉館時間が迫ってしまい、ミュージアムショップにも寄れず出口を探して走り回るありさまでしたが、そんな駆け足で通ったファッションのコーナーもかなり充実していました。
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どれだけ巨大かわかりますか?観客の大きさと比べてみてください!!
途中で通った巨大な彫刻もびっくり仰天です。
これ、ローマのトラヤヌス帝の記念柱らしいです。
入りきらないので途中でポッキと折って並べてあります。
どうやって持って来たのでしょうね?
さすがは大英帝国!(フランス王国も人のこと言えませんけれどね)

この博物館は本当に時間切れで不完全燃焼。
多分1日あっても足りないでしょう。
フランスのミュゼはすごい!と思っていましたが、イギリスも侮れません。
パリからユーロスターでたった2時間、早めに買えば往復77ユーロという安売りチケットもあるので、パリ旅行のついでにロンドンまで足をのばすのもオススメです。
ちなみに、今回の滞在で物価の高さも食事のまずさも全然感じませんでした!
東京のような人口密度で少し疲れましたが、機会があれば何度でも訪れたい町になりました。
次回はV&Aにたっぷりと時間をかけて、評判のいいミュージアムカフェも堪能したいと思います。


Victoria and Albert Museum
Cromwell Road
London SW7 2RL
開館時間:毎日    10:00 ~ 17:45  
     毎金曜日  10:00 ~ 22:00 (一部の展示室は 18:00 以降もオープン。)
     12 月 24/25/26 日はクリスマス休暇のため休館
メトロ(Underground):サウスケンジントン地下鉄駅(ピカデリー線またはサークル・アンド・ディストリクト線)

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# by paris_musee | 2009-10-05 00:00 | 有名ミュゼ