パリにあるとっておきミュゼをご案内します
by paris_musee
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
カテゴリ
有名ミュゼ
お城ミュゼ
邸宅ミュゼ
テーマミュゼ
企画展
ミュゼ以外の歴史的建造物
その他
以前の記事
2010年 04月
2010年 03月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
タグ:フランス絵画 ( 4 ) タグの人気記事
さすがは本場、充実のフランス絵画 パート4 ルーヴル美術館 リシュリュウ翼+シュリー翼2e(3階)
皆様、夏休みはいかがおすごしでしょうか。
先週は勝手ながらお休みを頂きました。
今週もまたルーヴル美術館のフランス絵画の続きをお送りします。

f0197072_23403576.jpg
外からの光が強くてななめからの写真になってしまいました...
こういう作品、ご覧になったことがありますか?
私は学生時代の美術の時間に、やたらとしわをよせた布の上のワインのボトルやフランスパン、レモンや本を描かされた記憶があります。
布のやわらかいしわやガラス瓶の光沢、その他のモチーフの質感の違いがなかなか描けなくて、とても苦労しました。
こういう静物画を見ると、やっぱり画家は上手なんだなーと当たり前ながら感心してしまいます。
きっと画家にとって、ガラスの透明感や植物のみずみずしさ、布の柔らかい質感、紙のペラペラした質感なんか、まさに画家の技量を存分に発揮できるモチーフだったんでしょうね。

だからといって、「ホラ、上手だろうー!」と自己満足に浸るためにこういう絵を描いたんじゃないんですよね。
17世紀頃になると、教会や王様だけでなく、お金持ちになった市民も画家に絵を依頼するようになります。
彼らの家は教会や宮殿なんかに比べたらとても小さいので、作品のサイズも小さくなるし、あまり仰々しい宗教画よりはインテリアの邪魔にならないような風景画や静物画が好まれるんです。
オランダをはじめ、17世紀にはガーデニングも流行り、自然に対する関心も高くなってくるのに関係があるのかもしれません。
フランスは他の国から遅れて静物画というジャンルが成立しました。
フランス人の静物画家としては、この『チェス盤のある静物』を描いたリュバン・ボージャンが第一人者と見なされています。
f0197072_23403576.jpg

もう一度じっくり観てみましょう
さて、この絵に描かれているものを見てみましょう。
まず右奥にあるのが八角形の鏡、でも何も映っていません。
手前に半分に折ったチェス盤があって、手前にはトランプ、ベロアのお財布、リュート(弦楽器)、楽譜。
奥にはグラスに注がれたワインとパン。
そして画面中央にカーネーションを挿した水の入った透明の花瓶が描かれています。

材質は木、ベロア、紙、水、植物、パン、ガラスですね。
質感もバッチリ描き分けられています。

こういう静物画はだいたい「五感」が描かれています。
視覚ー鏡
聴覚ーリュート
触覚ーお財布、チェス盤、トランプ
味覚ーパン、ワイン
嗅覚ーカーネーション
こちらも完璧。

そして、静物画なのにちょっと宗教的というか、教訓めいたことが暗に示されているんですよ。
パンとワインはキリストの肉と血を表していますし、
お財布やチェス、トランプは賭け事、つまり享楽や人間の堕落を表します。
ギターは恋の企みに使われますし、花ははかなさの象徴です。
希望を映し出すはずの鏡が真っ暗なので、これもいずれ死を迎えるという示唆です。
全部ひっくるめると、人間の営みには限りがあるんだから、賭け事や恋愛といった快楽にばかりうつつを抜かして堕落せずに、信仰心を持って生きなさいということでしょうか。
f0197072_2340572.jpg

ジャック・リナールのこちらの静物画は何が描かれているでしょうか?
静物画じゃなくてもこういうモチーフはよく出てくるんですが、他には、
本、科学や数学の道具は知のはかなさを、硬貨、宝石、武器、王冠は富や権力のはかなさを、そしてタバコやお酒、楽器やゲームは享楽のはかなさを表します。
骸骨や時計、砂時計、ろうそくの火、花は人生のはかなさを、麦の穂や月桂樹は永遠の生の復活のシンボルだったりします。
静物画でもとりわけヴァニテと細かいジャンル分けをしたりもします。ヴァニテとは「むなしさ」のことです。
f0197072_23412520.jpg

こちらのジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥールの『マグダラのマリア』もこの原則が生きています。骸骨=避けられない運命(死) 鏡=人間のはかなさ 炎=使い果たされてしまう時間を象徴。ちなみに彼の有名な『大工の聖ヨセフ』は日本に巡回中です!ルーヴル美術館展は今京都でしょうか?お近くの方、是非観に行ってくださいね
といっても、高校の美術の先生が現代に「人生は無常なので信仰心を!」というメッセージを伝えたくて静物画を描かせる訳がないので(日本ですしね)、静物画はやっぱり絵の技術をはかるのにもってこいのジャンルなのです。
17世紀当時でも、教訓的メッセージはあるものの、モチーフの質感の描き分け、モチーフの配置の妙、色彩やボリューム感など美的価値観によって注文主から依頼が来たりしたのでした。
私たちもこういう作品を見るときに、単純に「うわ〜、本物のベロアみたい!」とか「おいしそうな果物!(よく見ると虫食いがあったりしますが)」とか「昔の人はこういう遊びをしてたんだー」と見たままに感じていいと思います。
でもこういう約束事を思い出すと、また別の視点からも鑑賞ができますよね。

今日は絵解きみたいなお話しになってしまいました。
ではまた来週!


住所   rue de Rivoli 75001(正式な住所はMusée du Louvre。メトロを出たらすぐわかると思います)
メトロ  1番線、7番線 Palais Royal-Musée du Louvre
開館時間 水曜日から月曜日 9時から18時(水曜日と金曜日は22時まで)
チケット 常設展とドラクロワ美術館 9ユーロ (水曜日と金曜日の18時から6ユーロ)
ナポレオンホールの企画展のみ 9.5ユーロ
常設展と企画展 13ユーロ (水曜日と金曜日の18時から11ユーロ)
毎月第1日曜日は入場無料
日本語公式サイト


[PR]
by paris_musee | 2009-08-17 00:00 | 有名ミュゼ
さすがは本場、充実のフランス絵画 パート3 ルーヴル美術館 リシュリュウ翼+シュリー翼2e(3階)

<17世紀 フランスのバロック=古典主義>
17世紀はヨーロッパ中でバロック旋風が吹き荒れた時代でした。
明暗対比に劇的な一瞬を、フツーの風景の中にとけ込ませるのが特徴です。

シモン・ヴーエというフランス人が帰国した1627年が、フランス絵画の転向の年と言われています。
すごいですね、生まれ故郷に戻って来ただけで、絵画史が変わってしまうんですよ。
彼はローマやヴェネツィアでカラヴァジスムを学んでいたんですが、ルイ13世に呼ばれて王の首席画家となります。
f0197072_23292642.jpg

『神殿への奉献』というこの作品は、ルイ13世の宰相リシュリューに頼まれてパリの教会に奉納された作品。
バロックまっただ中の時代の、カラヴァッジオに影響を受けた画家の作品です。
うーん、でもかなりカラフルで、背景の建物が水平線と垂直線を作っていて落ち着いた雰囲気をもたらしていますよね。
これがドラマチックなバロックと言われるとちょっと違う。
明るい色彩はヴェネツィアの作家の特徴とも言われていて、ヴーエもヴェネツィアにいたのでそれに影響されたのでしょう。
背景もギリシャ風の柱なんかがあって古代建築ですよね。
古代建築に遠近法、人間のプロポーションも理想的!
しいて言えば、イタリアの盛期ルネサンスみたいじゃないでしょうか。

そう、フランスは盛期ルネサンスを飛び越えてマニエリスムを取り入れてしまったので、こういう古典主義風な作風が新鮮だったんです。
17世紀のフランスはバロックというより盛期ルネサンスに近いのです。
でも前の時代に後戻りした、というわけではなく、バロックの別解釈で「古典主義」がクローズアップされたと言う方が正しいようです。
ルーヴルの解説パネル(かなーり専門的な解説をした日本語パネルがあるんですよ。私も勉強させていただいています)にも「古典主義」というカテゴリーが使われています。

では17世紀フランスの「古典主義」の代表作家をご紹介しましょう。
なにはなくとも、ニコラ・プッサン。
「フランスの」と言っておいて、彼は24歳のときにイタリアに行ったっきり、ルイ13世に呼ばれて滞在した2年間を除いて死ぬまでローマで過ごしていました。
彼もすごいですよね、ほとんどイタリア人になっちゃってるのに、忘れられるどころかフランス絵画の代表作家。

彼が得意としたテーマは古代の歴史や神話、旧約聖書などです。
やっぱりヴェネツィアの画家のティツィアーノやヴェロネーゼに影響を受けたので、明るい色使いです。
ルーヴルにはかなりプッサンの作品があるんですが、どれも黄色、青、赤のギリシャ風衣装で、古代建築が描かれています。
f0197072_23295472.jpg

私の好きな作品は『ソロモンの審判』
あるところに赤ちゃんが2人生まれます。でも1人はすぐに死んでしまいました。
2人の母親は、残った赤ちゃんの本当の母親は私だと言い張ります。
2人はソロモンの前に行って、本当の母親はどちらか決めてもらうことにしました。
ソロモンは刀を取り出し、赤ちゃんを2つに切り裂いて2人にわけようとします。
母親のひとりは、あの女にあげてもいいから赤ちゃんを殺さないで!と叫びます。
もうひとりは、殺してしまえ!と叫びます。
こうして本当の母親がわかった、という旧約聖書のお話。
左奥の男が、いままさに宙づりにした赤ちゃんを切り裂こうとしています。
左の女性がやめてと叫び、ぐったりとした赤ちゃんを抱いた右の女性は恐ろしい顔をしてやってしまえ!と怒鳴っている場面ですね。
ドラマチックな場面ですが、水平垂直の建築物を入れて落ち着いた構図にしています。

この先に円形のお部屋(展示室16)があって、4枚の作品が展示されています。
これもプッサンの『四季』という作品。死の1年前に描かれた最後の完成作品だそうです。
春夏秋冬を1枚ずつ描いているんですよ。
どれがどの季節かわかりますか?
f0197072_23302094.jpg

春は裸の男女が森の中にいる作品。アダムとイブの場面です。時間は早朝。
f0197072_23304072.jpg

夏はみんなが収穫をしている作品。ルツとボアズの場面(あまり有名ではないですが)。時間は太陽が真上から照りつける正午。
f0197072_2331166.jpg

秋は大きなブドウを運んでいる作品。カナンの葡萄の場面。夕暮れ時です。
f0197072_2331307.jpg

冬は洪水の作品。ノアの大洪水の場面で、黄昏時。
これらはリシュリューに依頼されて制作しましたが、球戯をして王に負けてしまったので、のちにルイ14世のコレクションになります。

このニコラ・プッサン、その後のアーティストにどのように見られていたのでしょうか。
「古典主義」の巨匠だったことをふまえると、
同時代のリュベンスやヴェネツィア派からは不人気、
18世紀のロココの画家ブーシェやフラゴナールからも支持されず、
19世紀の新古典主義のダヴィットやアングルからは絶大な人気でしたが、
ロマン主義の画家からの評価は低く(でもドラクロアは絶賛)、
19世紀末の印象派のセザンヌやドガのお手本となり、
20世紀にはピカソなどのキュビズムや抽象表現主義の画家にも人気でした。
プッサンとピカソの共通点なんてあまり思いつきませんが、こんな風に画家たちは過去の作品を参考にしたり反発したりして、自分たちの思想と混ぜながら新しい画風を作っていくんですね。

まだまだ先は長いのに、モタモタしてしまいました。
来週は「静物画の見方」についてお話ししたいと思います。


住所   rue de Rivoli 75001(正式な住所はMusée du Louvre。メトロを出たらすぐわかると思います)
メトロ  1番線、7番線 Palais Royal-Musée du Louvre
開館時間 水曜日から月曜日 9時から18時(水曜日と金曜日は22時まで)
チケット 常設展とドラクロワ美術館 9ユーロ (水曜日と金曜日の18時から6ユーロ)
ナポレオンホールの企画展のみ 9.5ユーロ
常設展と企画展 13ユーロ (水曜日と金曜日の18時から11ユーロ)
毎月第1日曜日は入場無料
日本語公式サイト


[PR]
by paris_musee | 2009-08-03 00:00 | 有名ミュゼ
さすがは本場、充実のフランス絵画 パート2 ルーヴル美術館 リシュリュウ翼+シュリー翼2e(3階)

<16世紀末から17世紀 バロックの時代>
美術の様式にはだいたい名前がついていて、ちょっとお勉強的になってしまうのがタマにキズですが、特徴を分類する上で便利なのでおつきあいいただきたいと思います。
「バロック」というのも様式の名前で、ルネサンスの後に登場します。
私が聴講していたルーヴル学院の授業でも、近代美術はバロックから始まりました。
f0197072_23135351.jpg

彼がカリスマ・バロック画家のカラヴァッジオ。なんだかとっつきにくそうなお顔に見えませんか
バロックと言えばカラヴァッジオ。この人はイタリアの人です。バロックのカリスマ画家。
実は彼、才能はあるんですがお酒を飲むと人が変わってしまい、何度も刑務所に入れられたワケアリの画家。
ある日、決闘をして相手を殺してしまったこともあるんです。

f0197072_23143432.jpg

こちら『聖トマスの懐疑』という作品。イエスの復活を目撃しなかった使徒のトマスが、実際にイエスの聖痕に指を突っ込んでやっと信じる、というシーンです。光が差し込んで明暗対比がハッキリしているのと、イエスもトマスも聖人というよりフツーの人っぽく描かれ、さらに劇的な場面を題材にしていますよね。この作品はドイツのサンスーシ宮にあります
こんな激情型の性格を反映してか、彼の描く絵画はとてもダイナミック。
暗い室内に明るい光が差し込む明暗対比と、動きのある場面や劇的な一瞬をリアルに描くのが特徴です。
宗教的なテーマでも、それをわざと日常にありがちな風景の中にとけ込ませたりします。
フツーの人に見えても、それがキリストだったりするのです。
そんなカラヴァッジオの作風は、そのままバロックの特徴といってもいいでしょう。
彼はイタリアから一歩も出ず、若くして死んでしまったのですが、この革新的な作風を学ぼうとヨーロッパ中からアーティストが集まり、バロックがヨーロッパへと広まりました。
カラヴァッジオの作風を取り入れた画家を「カラヴァジスム」の画家と言ったりします。

カラヴァッジオが大好きだったテーマのひとつに『女占い師』というのがあります。
この作品もルーヴルにあるので、見比べてみましょう。
女に占いをしてもらう場面なのですが、よく見ると占ってもらってる男の手からそーっと指輪を抜き取られている場面だったりします。
自分の運命を知りたいという欲求はみんな持っているけれど、その誘惑に負けてしまうとダマされたりするから気をつけなさい、という教訓でしょうか。
f0197072_216275.jpg

ニコラ・レニエの『女占い師』は、右の占ってもらってる白人女性のポケットからいままさにお財布が抜き取られているところが描かれています。
それだけかと思いきや、後ろの白人男性が占い師から鶏を盗んでいる瞬間も描かれています。だましだまされ...。
f0197072_2162013.jpg

ヴァランタン・ドゥ・ブーローニュの『女占い師』も、中央の占い師の手には男性から抜き取った指輪のようなものが見えますし、彼女のポケットのお財布(多分これも前のお客さんから盗んだであろう)を左端の男が盗ろうとしている場面が描かれています。
この2人の「カラヴァジスム」のフランスの画家は直接カラヴァッジオに師事したわけではありませんでしたが、フランスのカラヴァジスムの作家として活躍しました。

カラヴァッジオ。
問題を起こすたびにイタリア中を逃げ回る38年間の短い人生でしたが、その革新的な作風はどこへ行っても人気で仕事の依頼が切れることはありませんでした。
殺人まで犯したのに、その依頼主が教会だったというのも、いかに画家として信頼されていたかがわかりますよね。
彼の作品が同時代のイタリアだけでなく、その後のヨーロッパの絵画史に与えた影響もすごいものでした。
人生と作品の価値のギャップが大きくて、興味深い画家のひとりです。

まだまだフランス絵画の展示室は続きます。
カラヴァッジオがフランス絵画に与えた影響はどんなものだったのでしょうか。
次回はそんなところをお話ししたいと思います。


*最初の2点の作品はwikipedia Franceからお借りしました。


住所   rue de Rivoli 75001(正式な住所はMusée du Louvre。メトロを出たらすぐわかると思います)
メトロ  1番線、7番線 Palais Royal-Musée du Louvre
開館時間 水曜日から月曜日 9時から18時(水曜日と金曜日は22時まで)
チケット 常設展とドラクロワ美術館 9ユーロ (水曜日と金曜日の18時から6ユーロ)
ナポレオンホールの企画展のみ 9.5ユーロ
常設展と企画展 13ユーロ (水曜日と金曜日の18時から11ユーロ)
毎月第1日曜日は入場無料
日本語公式サイト


[PR]
by paris_musee | 2009-07-27 00:00 | 有名ミュゼ
さすがは本場、充実のフランス絵画 パート1 ルーヴル美術館 リシュリュウ翼+シュリー翼2e(3階)


当たり前ですが、フランスにはフランス絵画がいーっぱいあります。
その首都パリでしたら、ルーヴル美術館、オルセー美術館、ポンピドウ美術館の3大美術館を回れば、フランス絵画史の傑作のほとんどを見ることができると言っても言い過ぎではないでしょう。

今週からルーヴル美術館のフランス絵画を何回かにわたってご紹介したいと思います。
どれもこれもご紹介したいのですが、中でもとくに有名な作品や画家をピックアップしていきます。
リシュリュウ翼から入場して、エスカレーターで最上階の2e(日本式3階)まで上っていきましょう。

<14世紀 フランス最古の絵画>
f0197072_272356.jpg

ルーヴル美術館に展示されているフランス絵画は14世紀から始まります。
現存する最古のフランス絵画のひとつがコレ、『ジャン2世善良王の肖像画』。
壁画だったらもっと古いものが残されていますが、持ち運べる小さな絵画ではヨーロッパでももっとも古いものなんですって。
で、この人はイギリスとの百年戦争のまっただ中に君臨したヴァロア朝の2代目王。
イギリスの捕虜になってしまい、ロンドンで亡くなります。
中世の絵画(主に宗教画)は人物が理想化されて描かれていますが、これは意外にリアル。
友達の田舎の結婚式なんかに出席すると、こういうお顔の親戚がいたりします。
親しみやすい王様に見えるのは私だけでしょうか。

<15世紀、16世紀 フランスのルネサンス=フォンテーヌブロー派>
f0197072_273979.jpg

ルネサンスと言えばイタリア。当時のモードの発信地はフランスではありませんでした。
洗練されていない田舎のフランスは、イタリアに憧れてその様式をマネします。
ジャン・フーケが描いた『シャルル7世の肖像』は、素朴な『ジャン2世善良王の肖像』に比べて衣のヒダとかベロアの質感なんかがより繊細に描かれています。
f0197072_275776.jpg

約1世紀後のジャン・クルーエによる『フランソワ1世の肖像』はさらに衣装の質感が写実的で、奥行きを感じさせる空間が描かれています。

ルネサンスというのは、中世の理想化され抽象的に描かれている人物像に比べて、古代ギリシャ・ローマの彫刻などのように調和がとれ、本物そっくりに描かれるよういろいろな工夫がされた時代でもあります。
そうして背景に正確な遠近法が用いられたり、陰影の付け方など新しいテクニックが生まれるんです。
テーマもキリスト教だけでなく、ギリシャローマの神話などが取り上げられました。
フランスでは、クルーエの肖像画の張本人、フランソワ1世が本場のイタリア人アーティストを自分の城に招聘して芸術を擁護しました。
晩年のレオナルド・ダ・ヴィンチをフランスへ呼んだのも彼なんです。
以前ご紹介したフォンテーヌブロー城もフランスルネサンスの舞台になっています。
その場所にちなんで、この時代の絵画様式を「フォンテーヌブロー派」と呼んでいます。

f0197072_281482.jpg

こちらの作品はフォンテーヌブロー派の初期の作品。
フランスのルネサンスの作品です。
とはいいつつ、おなじみのレオナルド・ダ・ヴィンチなんかの作品とは全然違いますよね。
実はフランスで流行したルネサンスは、イタリアのいわゆる3巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエッロ、ミケランジェロが活躍した盛期ルネサンスではありませんでした。
盛期ルネサンスを通り越して、その後のマニエリスム(「マンネリ」の語源です)を輸入したというのが実のところ。
乱暴に言うと、マニエリスムってルネサンスの「調和」にこだわりすぎたあまりマンネリ化し、人物が8頭身や9頭身と間延びしてしまった様式です。
ホラ、ギリシャ神話のお約束の三美神やキューピッドが出て来たり、花々がきれいに咲いているんですが、キューピッドは子供らしくなくて中途半端に成長してしまってカワイくありません。
他の人物も手足が長くて頭が小さくて、よくみると変なプロポーションの不思議な作品になっていると思いませんか。
f0197072_284037.jpg

こちらの作品が後期フォンテーヌブロー派の代表的作品、『ガブリエル・デストレとその姉妹の一人』。
左手に指輪を持っている右の人物がガブリエル。アンリ4世の子供を妊娠したことを表しているのです。
左にいるのが姉妹。ガブリエルの乳首をつまんでいる仕草が面白いですね。
奥にいる召使いが縫っているものは、子供の産着とも言われています。
陰影の付け方、奥行き表現、上品な仕草と洗練されたフォルム、そして神秘性がフォンテーヌブロー派の作品の特徴です。

今日はここまでです。
本場イタリアの芸術をフランスにもってくるとき、どうしても時差が生じたり、違うところにスポットが当てられたりして、そのまんまの芸術様式とは違うものになってしまうんですね。
来週お話しする時代も、イタリア直輸入のはずがフランス独自の絵画様式に発展してしまいます。
それではまた来週!

住所   rue de Rivoli 75001(正式な住所はMusée du Louvre。メトロを出たらすぐわかると思います)
メトロ  1番線、7番線 Palais Royal-Musée du Louvre
開館時間 水曜日から月曜日 9時から18時(水曜日と金曜日は22時まで)
チケット 常設展とドラクロワ美術館 9ユーロ (水曜日と金曜日の18時から6ユーロ)
ナポレオンホールの企画展のみ 9.5ユーロ
常設展と企画展 13ユーロ (水曜日と金曜日の18時から11ユーロ)
毎月第1日曜日は入場無料
日本語公式サイト


[PR]
by paris_musee | 2009-07-20 00:00 | 有名ミュゼ