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先週はルイ16世一家が現在のチュイルリー公園にあった宮殿に幽閉されたところまでお話ししました。 王家のいなくなったヴェルサイユ宮殿からは、略奪を逃れた家具や彼らのものが新居に持ち込まれたので、 手狭になったとはいえ、まだまだ王族らしい生活は保たれていたのです。 そのときの革命の指導者たちも、王様はそのまま君主としていてもらうけれど、王権は憲法と議会によって制限されるという立憲君主制を目指していたのです。今のイギリスみたいな感じでしょうか。 でも王家と議会の間にいて、王に有利になるよう便宜を図ってくれていた人物ミラボーが死ぬと、 革命がもっと過激になっていくんじゃないかと危惧した国王は、 マリー・アントワネットの愛人とも言われていたスウェーデンの貴族フェルセンの「国外逃亡」のプランを実行するのです。 フェルセンは『ベルばら』でも主人公のひとりとしてクローズアップされているので、ご存知の方も多いかと思います。 小説でこの辺のくだりを読んでいると、ハラハラドキドキしてしまうのですが、結局この逃亡計画は失敗に終わります。 敗因はいろいろあるでしょうが、国王一家のプライドが邪魔してこの旅行が豪華で目立ってしまったのが原因のひとつです。 ワインに食事に衣装に馬車、どれもが不自由ないようにと配慮されて大荷物になってしまったんですね。 移動に時間がかかり、待ち合わせ場所に遅れるものだから、味方の軍や馬も待ちくだびれて帰ってしまう。 変装していたものの、あと少しの国境近くで国王一家だとバレて、非難轟々、罵倒され侮辱されながらパリに引き戻されるのです。 この国王の裏切りに擁護派の支持も失うと、外国が国王一家を救うためフランス国民軍と戦争を開始します。 フランス国民軍は負け続けます。 マリー・アントワネットがフランス軍の作戦を外国軍に漏らしていたからに違いないと疑われてしまいます。 そして国王一家はタンプル塔に移送されてしまいました。 タンプル塔の絵。暗くて寂しい感じがしますが、もともとは貴族の邸宅でした このタンプル塔、現在は3区の区役所とスクエア・タンプルという小さな公園になっている場所にありました。 カルナヴァレ美術館からも歩いていける距離。 おしゃれなブティックがある今一番若者に人気の場所を通るので、お散歩も楽しいです。 タンプル塔の再現部屋。質素な家具に加えて照明もくらーくしてあるので、本当に寂しい感じがします この塔の中がどんな感じだったのかは、カルナヴァレ美術館の一角に部屋の様子が再現されています。 普通の人の目にも質素と映る、小さくシンプルな装飾のベットや棚に囲まれて、家族でビリアードやゲームをして過ごしたといいます。 革命はどんどん激化していき、彼らの待遇も日に日に悪くなっていきます。 家族と引き離された1ヶ月におよぶルイ16世の裁判が終わり、翌朝死刑となります。最後に家族と会うことが許され、ルイ16世は息子に「私を死刑にした人を恨んではいけない」と声をかけます この展示室には、革命裁判にかけられてルイ16世との最後の別れのシーン、息子を引き離されて号泣するマリー・アントワネット、夫が死んで喪服を着ているマリー・アントワネット、断頭台に上るルイ16世などの絵画が展示してあります。 マリー・アントワネットの髪の毛が入ったアクセサリーなんかもあります。 1793年の1月に、現在のコンコルド広場でルイ16世はギロチンにかけられます。 ルイ16世の死後、マリー・アントワネットは寡婦として質素な喪服をつくってもらいます。37歳のマリー。疲れはて過去の優美さはなくなってしまいました。でも裁判、死刑執行の日まで元王妃としての落ち着きと品位は失いませんでした その後、マリー・アントワネットも裁判にかけられるため、シテ島にあるコンシェルジュリーという当時の牢獄に入れられ、人生で一番惨めな環境の中でも威厳を保ちながら毎日を過ごし、10月に夫と同じ場所で処刑されました。 革命はその後も終わらず、主導者が出ては旧体制のリーダーがギロチンにかけられることを繰り返して、ナポレオン・ボナパルトの台頭によってようやくフランスは平穏な日を迎えました。 ちなみにルイ16世とマリー・アントワネットの遺体は処刑当時は他の処刑者と一緒にされていましたが、現在ではパリ北郊外にあるサンドニの大聖堂の地下にきちんと葬られています。 いかがでしたか? 急ぎ足のフランス革命になってしまいましたが、実際の革命もあれよあれよと言う間に体制が変化して、その荒波にもまれて王と王妃は処刑されてしまったのです。 残った幼いルイ17世はタンプル宮で死んでいるのを発見されるのですが、「死んだのはニセもので、ルイ17世は逃亡してた」という噂が後を絶たず、自称ルイ17世がたくさん名乗り出たそうです。 でも最近DNA鑑定でタンプル宮で亡くなったのが本物のルイ17世という結論になり、歴史マニアをワクワクさせたミステリーに終止符がうたれました。 ちなみに明日、7月14日はフランス国家祭典である「革命記念日」です。 王権を打倒して、現代に続く市民社会を築くことになったフランス革命を記念したお祭りです。 革命の舞台シャンゼリゼ通りとコンコルド広場にかけて行われるフランスが誇る陸、海、空の軍隊パレードが朝からテレビ中継され、 夜にはエッフェル塔のそばで華やかな花火大会があります。 ちょっと歴史を知っていると、こんなお祭りも少し複雑な思いがしてくるから不思議です。 それではまた! カルナヴァレ美術館Hôtel Carnavalet 23, rue de Sévigné 75003 Paris 電話 : 01 44 59 58 58 Fax : 01 44 59 58 11 メトロ Saint-Paul(1番線) Chemin vert(8番線) 開館時間 10時から18時(レジは17時半で閉まります) 休館日 月曜日、祝日 入場料 常設展示 無料 /企画展示 4.5ユーロ(18歳以上26歳未満は3.8ユーロ)
by paris_musee
| 2009-07-13 00:00
| 邸宅ミュゼ
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