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さあ、ルーヴル美術館のフランス絵画のお話も終わりに近づいて参りました。 今日はロマン主義についてのお話です。 今回もwikipedia franceから画像をお借りしています。 時代は18世紀の終わりから19世紀にかけて。 ロマン主義というのは文学におけるスタイルとして使われることが多いのですが、絵画におけるロマン主義というのもあります。 **主義というのは、たいてい前スタイルへの反抗がもとになっていますので、新古典主義との比較で特徴を観て行きたいと思います。 新古典主義は理知的で、歴史や古代ギリシャローマをテーマにしていて、厳格な水平垂直の構図や画面を安定させるための三角形を多用しました。キッチリカッチリがモットー。とても男性的です。 一方のロマン主義というのはその反対と考えていただいて結構です。 でも新古典主義の前のロココにはならない。 もうフランス革命が行われていて、時代は王様のものではなく市民(ブルジョワジー)のものだったからです。 おまけにナポレオン帝国が東へ領土を広げまくっていて、キリスト教世界と異なるオリエンタルな世界の情報が入って来る。 新古典主義のキッチリカッチリが窮屈すぎて、そこから解放されたくて仕方がない、そこに東方趣味が加わります。 個人的にも理性的なものから逃れたくて、夢や幻想、個人の気持ち、内面世界が注目される。 というわけで、題材はオリエンタルなもの、現実世界の恐怖や不安を感じさせるような事件、夢のような幻想的な世界を描きます。 ドラマチックに描きたいので、対角線構図を用いて画面に動きがあるように見せたり、ハっとするような一瞬を切り取ったりします。 ロマン主義の画家として有名なフランスの画家はウジェーヌ・ドラクロワとテオドール・ジェリコー。 さっそく代表作品を観て行きましょう。 ![]() この中央の女性はフランスを象徴する「マリアンヌ」の元祖モデルになっています。フランスの切手に使われる肖像画です。今っぽくするためにブリジッド・バルドーなんかがモデルになった時期もありました 『民衆を率いる自由の女神』ウジェーヌ・ドラクロワ この作品、名前は知らなくても観たことがある方はすごく多いと思います。 フランス革命と思い込んでる方もいるかもしれませんが、1830年の7月革命が題材です。 フランスの国旗トリコロールは、「自由」「博愛」「平等」の意味を持っていますが、これらを勝ち取るために立ち上がった半裸の女性と、彼女に率いられ武器を片手に立ち上がる民衆の興奮した空気が伝わってくるような作品です。 画面下に横たわり踏みつけられた死体も、革命の切迫感、凄惨さを表していますよね。 国旗や衣服、背景の煙なんかも動きのあるダイナミックな作品の小道具となっています。 この作品は当時の事件をドラマチックに描いたロマン主義の象徴的な作品です。 ![]() 画面のどこを見ても悲壮な物語が繰り広げられているオリエンタルな一枚です 『サルダナパールの死』ウジェーヌ・ドラクロワ こちらはどうでしょう? 中央のベットに横たわるのが古代アッシリアの王様サルダナパール。 その周りで家臣たちが次々と殺されていくのを落ち着いた様子でながめています。 実は、圧政に耐えかねて反旗を翻した反乱軍の前で、快楽主義者だったサルダナパールは自分の臣下を目の前で殺させるというシーンなのです。 赤いベットが斜めに画面に配置され、体をさまざまな方向によじらせながら殺されて行く臣下たち。 王のまわりには大切にして来た宝が散乱しています。 色彩の氾濫、四方八方に目移りするようなダイナミックな構図、この絶望的で凄惨な場面に立ち会いながら冷ややかな目で事の次第を見守る王の表情が尚いっそうこの修羅場を強調しているようです。 オリエンタルな題材もまたロマン主義ド真ん中ですよね。 ちょっと刺激が強すぎて、サロンではスキャンダルになり不評だったといいます。 ![]() 現実にあった壮絶な事件をもとに描いた作品。色味が少なくモノトーン調なのがよりいっそう悲劇をひきたたせていますね 『メデュース号の筏』テオドール・ジェリコー 彼が生きていた時代に実際にあったお話が題材になっています。 王立海軍のメデューサ号という船が難破してしまい、救命ボートも満足になかったため乗客は即席で作られた筏に乗らざるを得ませんでした。 13日の漂流の末、150人いた乗客のうち救出されたのはたったの10人だったといいます。 しかもこの生存競争には暴力や人食いなども行われ、凄惨を極めたためフランス政府は事件を伏せていました。 生存者の証言により事件が明るみに出て、この事件に人々は大きなショックをうけたのです。 この事件に着想を得たジェリコーは、生存者に話を聞いたり死体安置所などに通いつめてデッザンを繰り返し、現実の事件をこの目で見たかのようなリアリティーを持って作品を仕上げました。 画面の右、水平線の先に本当に小さな船の存在が確認できます。 この船が彼らに気づくことなく遠ざかって行くところを、生存者たちが懸命に絶望と最後の希望の入り交じったサインを送るという緊張した一瞬を描いているのです。 右上に向かう人体のうねるような動きや、死、絶望、恐怖、諦め、嘆願、歓喜の青白い人体をさらに劇的に描く明暗表現、見るものをドキドキさせるような緊張感がここにはあります。 もちろんサロンでは注目を集めます。 残酷な場面にロマン主義の作品として絶賛する人もいれば、リアルな死体表現に嫌悪感を抱く人もいました。 みなさんはどんな気持ちでこの作品をご覧になるでしょうか? というわけで、次回はルーヴルのフランス絵画シリーズの最終回としてコローの風景画についてご紹介したいと思います。 住所 rue de Rivoli 75001(正式な住所はMusée du Louvre。メトロを出たらすぐわかると思います) メトロ 1番線、7番線 Palais Royal-Musée du Louvre 開館時間 水曜日から月曜日 9時から18時(水曜日と金曜日は22時まで) チケット 常設展とドラクロワ美術館 9ユーロ (水曜日と金曜日の18時から6ユーロ) ナポレオンホールの企画展のみ 9.5ユーロ 常設展と企画展 13ユーロ (水曜日と金曜日の18時から11ユーロ) 毎月第1日曜日は入場無料 日本語公式サイト
by paris_musee
| 2009-10-19 00:00
| 有名ミュゼ
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