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フランスは地震がないせいか(地方によっては地震はあるそうです)、古い建物が今でも使われていたりします。 日本では「**の生家跡」という標識はよくありますが、フランスは生家だったり住んでた家だったりがそのまま残っていることが多いのです。 今回はアーティストが過ごしたおうちミュゼの中から、ギュスターヴ・モロー美術館をご紹介します。 ギュスターヴ・モローってご存知ですか? 活躍したのは19世紀後半。 ルーヴル美術館とオルセー美術館の両方に収蔵品がありますから、先週ご紹介したカミーユ・コローと年代は同じくらいでしょうか。 美術史としては「象徴主義」の先駆者と見なされています。 これはまだお話ししていないと思うので今回はまず「象徴主義」についてご説明したいと思います。 イギリス人作家のオスカー・ワイルドが19世紀末に発表した『サロメ』という小説の挿絵。オーブリー・ビアズリーという画家です。 18世紀後期、19世紀初期フランスには「新古典主義」「ロマン主義」という大きな流れがありましたが、アカデミーを中心としたものでした。 その保守的なアカデミーに反発するアーティストが目指した方向として、ひとつは日本では大人気の「印象主義」(モネやゴッホが有名ですね)、もうひとつは「象徴主義」というスタイルがうまれます。 現代のチェコ生まれ、フランスの世紀末に美術工芸のスタイル、アールヌーボーの作家として活躍したアルフォンス・ミュシャ。 ちょうどお隣のイギリスで「ラファエル前派」というスタイルがいち早く確立されていました。 これは、それまですばらしいとされてきた作品がイタリアルネサンスの巨匠であるラファエッロ的なものだったのですが、それ以前の中世の宗教的絵画や文学なんかをお手本にしよう!という運動です。 ラファエッロの特徴ががキッチリカチカチの「理性」「現実」だとすると、その反対の儚い「感性」「精神」「夢」なんかがもてはやされるのです。 21世紀になる前の1999年、まことしやかにノストラダムスの大予言が的中して地球が滅びるとか、コンピューターが制御不能になるとか、不安になるような噂がたちましたよね。 20世紀になる前の世紀末もまた、ロンドンでは切り裂きジャック事件が世の中を震撼させたりと社会不安がひろがり、ちょっとオドロオドロしいような世界観、儚い夢の世界、退廃的で神秘的なものなんかが文学でも美術でも市民権を得るのです。 この作品はご覧になった方が多いと思います。ウィーン世紀末芸術を代表するがかクリムトの『接吻』 こういった世紀末の不安を背景にして、ヨーロッパ中で「世紀末芸術」と総称できる(各国各グループでで呼び名は異なりますが)運動が起こったんですね。 大雑把に言ってしまえば、エミール・ガレもミュシャもクリムトもギュスターヴ・モローもウィリアム・モリスもロートレックもムンクもアントニオ・ガウディも「世紀末芸術」のアーティストに分類できます。 そんな「世紀末芸術」が描いたものは現実のリアルな世界というよりは、現実にはありえないようなちょっと暗い世界です。 「死」「夢」「神話(とりわけ悲劇的なシーン)」「幻想的な物語」「退廃」「絶望」「モンスター」「エロス」「アンニュイ」なんかがよく画面に表れます。 綺麗な原色よりはちょっとくすんだ暗い色が画面を支配します。 個人的には、見ていて元気がでるような明るい作品ではなく、ちょっと「どうしたのかな?」なんて心配になるような作品だと思います。 なんとなくわかっていただけたでしょうか? そんな世紀末芸術、フランスでは特に「象徴主義」と言われる運動の先駆者と見なされているのがギュスターヴ・モローという画家です。 来週はモローの人生をクローズアップしてご紹介して行きたいと思います。 今回の画像はすべてwikipediaよりお借りしました。 ギュスターヴ・モロー美術館 Musée National Gustave Moreau 住所:14, rue de la Rochefoucaud 電話:0148 74 38 50 メトロ:12番線 Trinite または st-George 開館時間:10:00-12:45 昼休みをはさんで 14:00-17:15 休館日:火曜日 入場料:5euros (割引は3euros、18才以下と第一日曜日は無料) 美術館公式サイト
by paris_musee
| 2009-12-07 00:00
| 邸宅ミュゼ
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